Home / 青春 / 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜 / 第1部 一章 【財前姉妹】その1 第伍話 読みの竹田

Share

第1部 一章 【財前姉妹】その1 第伍話 読みの竹田

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-02-28 13:36:05

5.

第伍話 読みの竹田

 まずは麻雀をやろうということで細かいことを考えるのはとりあえずやめて牌を触ることになった。

 コタツの板をひっくり返す。そこには麻雀用のラシャがある。(これは特別な作りではなくて古いタイプのコタツは全部そうだ)押し入れから牌を引っ張り出してきてガシャッと広げる。黄土色の練り牌だ。

「赤はどうする?」

「1枚ずつ入れよう」

「そうね、それが一般的だし、そうしましょう」

「点数は?」

「25000持ち」

「イチニーヨントーね」

 イチニーヨントーとは一万点棒を1本、五千点棒を2本、千点棒を4本、百点棒を10本という状態を原点としますという意味だ。一般的な麻雀セットに五百点棒は入っていないのでこれが通常。

 牌をジャラジャラとかき混ぜて裏返しにして17枚を集める。それを1列としコタツの端っこでシャンときれいに揃えると、もう17枚をさらにそこにきれいに揃えて2列目も整え、その2列目の上に1列目を乗せる。

ガシャン

 これを4人ともがやって『山』が完成する。牌の枚数は34種136枚なので17×8で丁度だ。サイコロを振って親を決めたらゲーム開始!

 ついにこの日、麻雀部の記念すべき一回戦が始まったのであった。

東家 財前カオリ

南家 財前マナミ

西家 佐藤ユウ

北家 竹田アンナ

立会人は佐藤スグル

「「よろしくお願いします!!」」

 元気よく挨拶をしてゲームが始まった。

「リーチ」

打⑨

 東1局は親のカオリが見事な山読みをして先制リーチを打つ。しかしこの場には竹田アンナの罠があったのだった。その罠にカオリはものの見事にハマってしまう。

竹田アンナ手牌

二三八八⑦⑧233445西西 ドラは3

 高め高めと引けばタンヤオも付くのでここから切る牌は西が合理的だと言える。が、アンナがこの時見ていたのはカオリの捨て牌とユウの捨て牌。

 カオリの捨て牌には④③が4巡目5巡目と並んでいた。そして西家のユウは2巡目に西切り。

アンナの選択

打八

 立会人のスグルはそれを見ていてこっそり耳打ちする。

(あのさ、竹田さんは役は全部知ってるのかな?)

(あ、タンヤオのことですか? 大丈夫ですよ。知っててコレ切りなんです。あとで理由は言いますね)

 スグルには意図が分からなかった。西はあとで安全牌として落とすことを考えてるのだろうか? でもこれは勝負手だからオリや迂回を考えた打ち方をするのはどうなんだ? そう思ったが……。

 そこでカオリからリーチが飛んでくる。 

「リーチ」

と同時にアンナもテンパイ。

「私もリーチです!」

 リーチ合戦となりカオリは少し気まずそうにする。そしてツモ⑨。宣言牌を被らせてしまう。

 その時カオリの顔が少し曇る。

「ツモ!」

 竹田アンナの一発ツモだ。

アンナ手牌

二三⑥⑦⑧233445西西 四ツモ

「メンピン一発ツモドラドラ…裏1。3000.6000!」

「さっきのことだけど、やっぱりほらココは西落としとけば倍満になってたんじゃないの?」とスグルは言う。しかし。

「それはどうでしょうか。カオリ先輩の待ちってなんでした?」

「う、西よ」

そう言い手牌を開けるとカオリはチートイツの西単騎だった。

「というわけです」

「マジかよ…… つまりカオリちゃんの④③リャンメンターツの序盤外しからチートイツの狙いを予測し、であるなら西家のユウが2巡目に捨てた西は待ちごろの牌として持ってるかもと考えて、その牌が無いという情報を封印した、結果カオリちゃんは山に無い待ちでリーチしてしまい逆を残せば一発ツモだった手を空振り、そしてこっちが逆に一発ツモした。そういうことかよ」

 竹田アンナは伊達にテーブルゲーム研究部などに入っていないという超一流プレーを見せつけた。

「ま、実際に西待ちだったのは偶然ですけどね。うまくいきましたー♪」

 読みの手練れ竹田

 その力はいとこの竹田シンイチ譲りのものだった。アンナのいとこもまた勝負師なのである。その能力は財前姉妹へと部活を通して受け継がれていくのだが、それはまだ先の話。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Related chapters

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章 【財前姉妹】その1 第六話 学びの共有

    6.第六話 学びの共有「さて、ここでちょっと止めてこの局の学びを共有しようか」とスグルが言う。佐藤スグルは立会人兼顧問だ、それを提案する権利がある。「まず、この局。カオリちゃんが凄かった。3巡目に捨てた六萬。これはなかなか切れないものだ。ユウの1巡目が九萬でありながら2巡目には西が出たことから六萬を持っていそうだと予想したんだよね?」 手牌に六九西とあれば七八をケアしている牌が六と九で被っているので字牌より先に九から打ち出すのが攻守において効率的な手順である。「はい、その通りです」 カオリは驚いた。あんな誰も見てくれないであろう一打をしっかり思考まで理解してくれているなんて。と。(さすが…… これが、仕事で麻雀をやる人間ということなのかな)「なので、チートイツ本線の手がきたカオリちゃんは薄い上にど真ん中の六萬なんかいらないなと嫌う。それが幸いして残した牌は重なりチートイツテンパイ。1枚切れの西かまあまあ良さげな⑨筒の選択だけど、それなら1枚切れオタ風単騎にした方がアガりやすいだろうと⑨切ってリーチ。見事な手順でした、しかし……」 そう、しかし…… だ。その手順は嵌められていた。「しかし、それを見こしていたのがアンナちゃんでしたね。序盤のど真ん中牌切りやリャンメンターツ落としを見て読んだわけだ。チートイツかチャンタか一色か単純に材料豊富で余ったか、決定は出来ないけど高確率で字牌を重宝してる手が入ってそうだと察して、西がもう無いという情報をタンヤオを犠牲にしてでもひた隠しにした。これが凄い!」「えへへー。この手は高打点確定の手でしたから不確定なイーハンくらい戦略のためなら下げてもいいし、捨て牌読みならテーブルゲーム研究部の私にはお手のものですゥ。将棋の読みと違ってその先その先って考えなきゃいけないやつじゃないしね。麻雀は私の性格に合ってるのかも!」 その後、東2局以降特筆すべき手順はなく、初めてのゲームは竹田アンナのトップで終了した。驚くべきは、スグルが見る限り誰も手順ミスをしていない。 スグルは彼女たちに麻雀を教えるつもりでいたがそれはとんでもない思い違いであった。既に4人は基礎は学び終えていて、むしろ自分が教えてもらうことが多そうだと、この半荘1回で痛感していたのだった。

    Last Updated : 2025-03-03
  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章 【財前姉妹】その1 第七話 ハイレベルな攻防

    7.第七話 ハイレベルな攻防 気付いたらもう佐藤家に来て2時間半くらい時間が経っていた。「あれ! もうこんな時間!? 帰らなきゃ!」 麻雀をやっていると時間が経つのが早い。それは全雀士が認めるところだと思う。とにかく麻雀は時間を奪う遊びなのである。「また明日も集まれる人!」そうマナミが言うとスグル以外の全員が同時にハイ! と言った。「え、お兄ちゃん集まれないの?」「変則シフトだからなあ。明日は多分難しいよ、また今度な」「じゃあ部屋だけ借りるね」「いいけど、あれこれ散らかすなよ?」「承知!」 今日の所はこれで解散とし、また明日ここで麻雀をする。そう約束して財前姉妹と竹田アンナは帰って行った。 次の日「…りち」 オーラスにマナミがリーチしてきた。まだ3巡目で安全牌は字牌1枚しかない。マナミは西家で2着目。トップ目のカオリは北家で16800点差。つまり、8000直撃でも転落しないし、3000.6000をツモられても捲られることはないということ。そして何よりマナミのリーチ宣言のやる気のなさ。「…りち」ってなんだよ。まあ二着でいいや。って言う気持ちが漏れてるような発声だ。(この辺かな?)一発目だけ現物を切るとそれ以降は差し込みに回るカオリ。「ロン。メンピン…2000」「カオリ先輩ここから差し込みなんて厳しいです~! だいたいハネマンだったらどうするんですか?」とオーラス親番だったアンナが言う。「アンちゃんは麻雀上手なのはもう昨日わかったから。モタモタしてたらアンちゃんにリーチされちゃうかもでしょ? リーチ棒出されたら(裏とか乗って満貫級になる可能性もあるから)差し込めないし。それに私達は仮にも姉妹よ。マナミが考えることなんてお見通し。このリーチは絶対に安いって分かってたの。まあ、わざわざ役ありを差し込ませるためにリーチしてるとは思わなかったけど」「へへ、ダマが普通かとは思ったんだけどね。でもリーチしたらカオリが差し込みするかと思って」「悔しいいい! アンナはハネマンの一向聴だったのに!」するとユウも「私だってハネマン好形二向聴だよ!」「おー危な!」 今回、カオリの差し込み判断は完璧な選択であった。それをさせるために役ありをリーチしたマナミもまたすごかった。 これから先このようなハイレベルな攻防が佐藤家の中で数々繰り広げられるこ

    Last Updated : 2025-03-04
  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章 【財前姉妹】その1 第八話 いざないのユウ

    8.第八話 いざないのユウ 今日も今日とて麻雀部は研究熱心だった。1局1局をしっかり再現してその都度検討していくと分かってきた事がある。それは佐藤ユウの麻雀の駆け引きの巧さだ。「さっきの局のユウちゃんのリーチ…… ちょっと凄くなかった?」 このような話題になる度にその場面を再現する。 佐藤ユウの麻雀は相手をコントロールする麻雀だった。その駆け引きは素人のそれとは違い、巧く相手をいざなう麻雀で、例えば今日彼女が披露した技はこうだ。 ユウは全員がメンゼンでやっている14巡目に急にツモ切りリーチをしてきた。彼女は西家。 この宣言牌は下家のアンは鳴ける牌だったがそれによりユウのツモ回数が増えてハイテイまで渡すのは良くないと考えてスルー※。そうしたら危険牌を引いて詰んでしまった。また、親のマナミは一発で危険牌を引いてきてしまったので中盤までなら押し返したけど残りわずかで流れるのなら安全牌を切ってオリきれる。オリきれるから立ち向かう気にならないとしオリてしまった。 結果、このまま14巡目以降もユウがダマのままだとしたらテンパイとしていた2人がオリて3人テンパイのはずの局に1人テンパイとして開きマナミの親も落としたのだ。 この、西家にハイテイ牌を回したくないという心理とオリきれる場面で打ちに回るのはバカらしいという思考をうまく利用した14巡目リーチはユウらしい技が光る局であった。しかもそのリーチの内容は3枚切れのペン七萬で手の内に一盃口という役もあるのだ。確実にこのリーチは展開をコントロールするためだけにかけたリーチだったのである。 佐藤ユウの麻雀は賢者のいざない。後の世で佐藤ユウはこう呼ばれることになる。【いざないの女賢王】と。◆◇◆◇解説※鳴きという行為はツモ山からではなく捨て牌からもらうということなので本来減るはずの山の枚数がひとつ残る。そうなるとツモアガリの抽選を受ける回数が増える人が出てしまうということ。今回の場合鳴いたらツモ抽選回数が増えるのはリーチをかけたユウになる。 リーチ者にとってツモアガリ抽選回数が増えることは喜ばしいことなので相手に喜ばれるような鳴きはしづらい。

    Last Updated : 2025-03-05
  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章 【財前姉妹】その1 第九話 香織の秘録

    9.第九話 香織の秘録 麻雀部は毎日誰かは集まったが4人揃うとは限らなかった。 アンにはテーブルゲーム研究部の活動があるし(たまにはそちらも顔を出している)スグルは仕事でいなかったり寝てたり遊びに行ってたりするので顧問合わせて5人というのはやはり麻雀をするには少ないかもしれない。「あと1人欲しいわね」そうマナミは言う。「1年生がいいと思うの、アンだけ1年生なのはバランスよくないし3年生は遊んでくれる人はあまりいないでしょ」 そう話しながら今日はファミレスで会議をしながら自作の何切る問題を出し合っていた。今日集まったのはカオリとマナミとユウだけだったので牌を触らずに会議の日としたのである。「誘うなら何かこの活動に大きな目標があるといいわよね。甲子園優勝とか、そんな感じの」「そうね、そしたらこうしましょう! ドキュメント美少女達は麻雀で飯を食う! 少女が麻雀を生涯の仕事としていくまで。とか、どう?」「自分らで美少女名乗るのは昔のアニメみたいだけど大丈夫かしら」とカオリは笑った。「でも、いいアイディアねマナミ。スケールが大きくて笑える所と、それを夢物語で終わりにしなさそうな実行力が備わっていてすごくいい。それ、アリなんじゃない?」「では、私たちは生涯雀士として生きることをここに誓います!」「きっとアンも賛成してくれるわよね」「あの子は言わなくてもやりそうよ」 こうして麻雀部は《生涯雀士育成》の名のもとに本気の本気で麻雀をする者のみの聖地となり結果、その覚悟がある人なんてそうそういるわけがないから新入部員はなかなか見つからないことになるという問題にはまだ気付かないカオリたちなのであった。◆◇◆◇ その日家に帰ってからふと、ドキュメントという事は記録を残す必要があるのかと気づいた香織は密かに麻雀部のことをノートに記した。××年××月××日 今日は真実が麻雀を語ってたのが印象に残った。麻雀は気合いだと。真実らしいなと思ったし、それは一つの事実でもあると私も思う。 気合いの乗って無い時はどんないい牌が来ても活かせない。少しリードしててもあっという間に溶かしてしまう。 技術より先にまず力ありきだと真実は言いたいんだと思った。 技術を捻じ伏せる気合いの乗ったパワー麻雀を真実からは学んで行こうと私は思ってる。 私は彼女達になにか教えてあげれる

    Last Updated : 2025-03-06
  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章 【財前姉妹】その1 第十話 転校生ミサト

    10.第十話 転校生ミサト その日、カオリのクラスに転校生がやってきた。「えー、今日からの転校生を紹介する。こちらは井川さんだ」 金髪に近い茶髪でロング。毛先をゆるめに巻いている。うちの学校は髪に対して校則はゆるいので何の違反でもないが、しかしここまで明るい髪色の人は珍しい。だけどなんだろう。すごく似合ってる。「井川美沙都です。12月25日生まれ。キリストのミサの日に東京都で生まれたからミサト。と言っても私はキリスト教じゃないけど。宗教なんて古い時代の発明でしょ、何が善で何が悪か自分の頭で判断出来るようになった現代人が頼るものじゃない。今の世には必要ないアイディアだと私は思っています。でも、自分の名前の由来はなんだかオシャレで好きなの。 親の仕事の関係で東京から引っ越してきました。よろしくお願いします」 なんか、強そうなのがやってきたな。とカオリは思った。「井川さんの席はとりあえず一番後ろに足しておいたからそこを使うように。分からないことがあれば前の席の財前が優秀だからそこに聞きなさい。ホームルームは以上だ」(あ、ほんとだ。後ろにいつの間にか席が増えてる)「財前さんよろしくね」「ええ、こちらこそよろしく井川さん」「ミサトでいいよ。ていうかミサトがいい。私、自分のファーストネームを気に入っているの」 カオリはいきなり下の名前で呼ぶのは馴れ馴れしくないか? と思ったが本人がそれがいいと望むのであれば仕方ない。「じゃああらためて、よろしくミサト」 ミサトはニコッと笑顔になって握手を求めてきた。「あらためて、よろしくお願いします! えっと……」「カオリよ」「カオリ、末長~くよろしくネ!」 この時の挨拶はまるで未来を予知するかのようなやりとりだった。  なぜならこの井川ミサトこそが財前姉妹の生涯のライバル。【護りのミサト】と呼ばれるようになる雀士なのであるが今はまだそんな事はお互い知るよしもないのであった。

    Last Updated : 2025-03-07
  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章 【財前姉妹】その1 第十一話 ストイックな女

    11.第十一話 ストイックな女 授業が終わり教室でアンが来るのを待つ。私はいつもアンが来るまで教室で待ってそれから一緒に帰るようにしてる。この学校は1年生の教室は3階で2年生は2階3年生は1階という配置なので私が1年生の教室に行くよりアンが2年生の教室に寄る方が自然だった。すると後ろの席のミサトから話しかけられた。「ねえ、帰らないの?」「あ、私は人を待ってるからミサトは先に帰っていいよ」「彼氏?」「まさか! ただの後輩の女の子よ」「ふーん」と、言いつつもミサトは疑っているようだった。私がソワソワしていたからかもしれない。でもそれは早く麻雀部に行きたくてソワソワしていたのであって恋人との待ち合わせとかではないのだが。「ミサト帰らないの?」「カオリの後輩を見てから帰るわ」 するとその瞬間扉が開いた。ガラガラガラ「先輩お待たせ!」 アンだ「じゃあ私帰るからまた明日ねミサト」 そう言いカオリとアンが帰ろうとするとミサトがついてきた。「え? 私たち行く所あるんだけど……」「それって私がついてっちゃマズイ所?」「そういうわけじゃないけどー」「じゃあ、連れてって。私カオリと友達になりたいの」「ひとつ聞きたいんだけど。ミサトは麻雀ってやったことある?」「ゲーム機でならやったことあるからルールは分かるけど、それが?」「はい、決まり」こうして、その日から井川ミサトが麻雀部に加わった。◆◇◆◇ 自己紹介がまだだったので駅まで歩きながらミサトはアンに自己紹介をした。「……あの、はじめまして、私は井川美沙都。名前の由来はミサの日に都で生まれたから。ミサトって呼んでね!」「あたしは竹田杏奈です! 麻雀部で唯一の1年生。好きにこき使っていいんで! よろしくお願いします」「麻雀部?」「そう、私たちは麻雀部です。今から向かうのはその部室。麻雀は知性なくしては勝てないゲーム。知恵と度胸を試される真剣勝負でしょう。高校生が部活動にしても全く問題ない健全なものなはずなのにそんな部活はないじゃない? おかしいですよね。だから先輩は自分達で勝手に部活を作ったの」 たしかに、麻雀はギャンブルのイメージはあるが他のギャンブルとはまるで違い100%頭脳戦だ。ギャンブルのイメージがあるものは大抵がバカでもタコでもできるようになってるが麻雀だけはそうはいかな

    Last Updated : 2025-03-08
  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章 【財前姉妹】その1 第十二話 ドラ重なりに備える

    12.第十二話 ドラ重なりに備えるピンポーン『……はい、ああカオリちゃん。ユウならまだ帰ってきてないよ。上がって待ってれば』とスグルが眠そうな声でインターホンごしに言う。どうやら今日は寝ていたらしい。悪いことをした。「お休みの所すみません、おじゃまします」と3人は靴を揃えて上がる。「いいんだよ、もう起きようと思ってたとこだ。今日は新人さんもいるんだね」「はじめまして、こんにちは。井川です。カオリさんのクラスに今日から転校してきました。よろしくお願いします」「はじめまして、今日からならあまり遅くなると家の人が心配するだろう。今日はいつもより少し早く切り上げようか」 ということで今日はユウとマナミを待たずにもうスタートした。 準備が整い試合開始。と同時に玄関のドアが開いた。ガチャ、バン!「ただいまーー!」「おじゃまします」 ユウとマナミだ。「あー、もうはじめてるー!」「あれ? そちらの方は?」「はじめまして。井川ミサトです」それ以上は言えなかった。いまは喋ってる場合ではない。もうミサトの手はかなり整ってきていた。親番のミサトは今が集中の時なので口を動かしていられない。 ユウとマナミはミサトの手を見に後ろに回った。東1局 親番 7巡目 ドラ1ミサト手牌二三四六七八赤⑤⑥12345 伍ツモ ミサトはここから最終形の強さと打点を考慮して打5とした。ドラ重なりに備える優秀な一手だ。しかし、次巡のツモは……ツモ赤5!ミサト手牌二三四伍六七八赤⑤⑥1234 赤5ツモ「~~~~~!!」(わあ、最悪)(でも仕方ないね)とユウとマナミはアイコンタクトで会話する。打1(だろうね)(まあそうなるかな、2索でもいい気もしたけど)次巡ツモ1ミサト手牌二三四伍六七八赤⑤⑥234赤5 1ツモ「!!」 これにはユウとマナミも笑いを堪えるのが大変だった。「……そんなんあんの」と少しボヤいて打1次巡ツモ⑤ミサト手牌二三四伍六七八赤⑤⑥234赤5 ⑤ツモ打2イッツーも見えてきた。すると、上家のアンの捨て牌が横になる。「リーチです」一発目に引いた牌は二萬。ミサト手牌二三四伍六七八赤⑤⑤⑥34赤5 二ツモ考える余地はない。「リーチ!」打⑤「ロン!」アン手牌四伍六④④④⑥456678 ⑤ロン「どないせっつーねん!

    Last Updated : 2025-03-10
  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章 【財前姉妹】その1 第十三話 偶然だから尊い

    13.第十三話 偶然だから尊い「あ! 猫」 佐藤ユウは動物が好きだった。特に猫には目がなく、道端で猫を見かけると反応してつい目で追ってしまう。「あー、いっちゃった……」「ユウちゃんホント猫好きね、家で飼ったりはしないの? ユウちゃんち一戸建てじゃない」とマナミが言う。「分かってないなぁ。猫は自由にしてるからいいのよ。飼いたいんじゃないの。偶然出会うから尊いのよ」「偶然だから尊い…… なるほど」「それに私の両親は生き物を飼うことは反対する人達なの。嫌いなわけじゃないのよ。むしろ動物は好きなんだけど、だからこそ命をおもちゃにしたくないって考える人達で、だから私は葉っぱしか飼ってたことない」「葉っぱ?」「うん、小さい頃にね。どうしてもペットが飼いたくて大きな葉っぱに紐つけて、葉っぱペットっていって可愛がってたの。おかしいでしょ」「アメリカじゃただの石がペットとして流行った時代があったって聞くけど、それと同じかな。面白いわね」 そんなたわいもない話をしながら水戸駅から15分程歩いて佐藤家に到着した。今日も麻雀の時間だ。 マナミは先程のユウの言葉を思い出していた。(偶然だから尊い……) それはある種の麻雀の真理かもしれなかった。マナミはアニメやドラマが好きで、麻雀のアニメやDVDなどは色々観てみたのだが、どれも手品のようなイカサマをして勝つだけの話ばかりであり、それに対してなぜかは分からないが何も魅力を感じていなかった。しかし、その理由が今分かった。必然の勝ちなんて何も面白くないと言うこと。 勝利とは奇跡であってこそ。偶然のチャンスを掴んだからこそ尊いのである。 その日の夜、自室で寝る前にマナミはカオリに話しかけた。「カオリー。私たちがこうして出会ったのは偶然かな?」「何よ急に。偶然だったらどうだっていうの」「だとしたら尊いなって。……ふふふふ。それだけ」「?」「なんでもないの。おやすみ」「? おやすみ」

    Last Updated : 2025-03-11

Latest chapter

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その6 第十一話 贅沢な生き方

    72.第十一話 贅沢な生き方「はー、食べた食べた。ごちそうさまでした」 紙ナプキンで口元の汚れを拭うとメグミは先程の話の続きをし始めた。「でえ、井川さんの何が凄かったかって大三元の局ね」「あれは凄かったですよね!」とマナミも言う。「うん、結果的にアガれたし。凄いのだけど。何が凄かったかはその結果の部分じゃないの」「っていうと?」「あの時、私は井川さんの対面の手を見てたわ。対面にいたのは私の同期だからちょっとだけ興味があったの。そんなに仲良しでもないんだけどね」「そう言えば対面を見てましたね」「うん、でもね。途中で遠くから見てるマナミの瞳孔が開いたの。動きも止まるし。カオリちゃんなんか『ぽかん』と口開いてるしで。(何かが起きてる)って思って。自販機に飲み物買いに行くふりして移動してみたわ。対局者の周囲をグルグルするのはマナー違反だからね、さりげなーく移動したのよ。そしたら大三元じゃないの」「ど、瞳孔??」かなり離れて見ていたつもりだったがメグミはどんな視力をしているのだ。いや、それよりも。なぜ外野の反応に気付いたりできるのか。プロはこわいな。と思うマナミたちだった。「少なくとも、私の同期はそれで気付いて止めたっぽいわね。本来なら一萬が止まる手ではなかったから」「そんな、ごめんねえミサトぉ」「いいわよ、おかげで大三元になったし、結果オーライよ」「凄いのは井川さんのその雰囲気。全然分からなかった。少しも役満の空気にはなってなかった。たいした手じゃないよ、みたいな顔で。あんな演技はなかなか難しいわ」「あの時は自分は5200を張ってると思い込ませていたので」「どういうこと?」「あの白仕掛けはマックス16000ミニマム5200のつもりで鳴き始めた手でした。なので5200だと思い込んで打つことで役満を悟らせない空気作りを心掛け

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その6 第十話 レートはタバスコ

    71.第十話 レートはタバスコ「はい、チキンステーキとラージライスです。器はお熱いのでお気を付けください」「はい」とカオリ。「スパゲッティナポリタンとほうれん草のソテーです」「はーい両方私です」と奥から手を伸ばしてミサトが受け取る。「いただきまあす」「ちょっと私タバスコとってくるね」とミサトが出ようとするので「いいよ私が持ってくる。私もちょうど飲み物おかわりしたかったし」とカオリが気を効かせる。「ありがとう、じゃあお願い」「タバスコと言えばさ。レートはタバスコって話知ってる?」とマナミが言ってきた「なにそれ、知らない」「ネットで麻雀戦術論を公開してる『ライジン』って人の記事が面白くて。その人の日記に麻雀のレートについて書いた記事があったんだけど。それがすごくいいのよ」 そう言うとマナミはそのSNSを開いて見せてくれた。◆◇◆◇××年××月××日××時××分投稿者:ライジン【麻雀のレートについて】 ごきげんよう、ライジンです。 今回は麻雀のレートとギャンブルについて語って行こうと思います。 結論から申し上げて、麻雀はギャンブルの部類に属さない。素晴らしい『競技』です。なぜなら、麻雀はあまりにもルールに縛られているゲームであるから。 まず、リーチについてですけど。 麻雀がギャンブルだと言うのなら勝負手なので10倍賭け

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その6 第九話 3面張固定のリスク

    70.第九話 3面張固定のリスク「「カンパーイ!」」カチン! 学生3人はドリンクバーのコーラとメロンソーダで。メグミは中生で乾杯した。 ゴクッゴクッゴクッ! と生ビールを飲むメグミはどこかオッさんぽくもあるが、大人の女性の色っぽさもあり魅力的に見えた。「……っはーー! ウマい!」 メグミはテーブルに4分の1の大きさに折って敷いたおしぼりの上に中ジョッキをゴン! と置くと今日の事を話し始めた。「まず、マナミは最強。まじでつよい。アンタには才能を感じる」「えへへ~。そうですよねえ」となぜかカオリの方が喜ぶ。「あんたら2人はさっさと上位リーグに上がって麻雀界を盛り上げちゃいなさい。今の調子なら出来るでしょ」「がんばります」「んでぇ。井川さん」「はい!」「最終戦だけ見てたんだけど、素晴らしいわね。特筆すべき点はふたつあったわ」「ど、どこでしょう」「ちょっと紙とペンない?」「あります」とカオリがスッと差し出す。カオリは何かあればすぐメモ書きして自分のノートに書き込む習慣があるので筆記用具を持っていない時などない。ポケットの中には小さなリングノートとボールペン。それと小さな巾着袋。袋の中には赤伍萬が入っている。裸で持ち歩いていると、もし仮に対局中に病で倒れるなど不測の事態で気を失った場合にポケットを探った人がこれを見つけたらイカサマを疑うかもしれない。なので巾着に入れて持ち歩くことにしたのだ。「ありがと」と受け取るとメグミはサラサラと牌姿を書いた。三三四③④⑤⑥⑦⑦56799 ドラ5「この形」「あっ、私の五回戦東2局!」「そ

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その6 第八話 伝説の姉妹

    69.第八話 伝説の姉妹「はい、全卓終了しましたので新人は牌掃除をして他の選手は速やかに退場して下さい。お疲れ様でした!」 全ての卓が対局を終えたら新人は牌をおしぼりと乾いたタオルで磨いてキレイにしてから会場を出る決まりだ。仕事でいつもやっているカオリとマナミは素早いがミサトは初めての事なのでカオリに教えてもらいながらやるが、中々うまく牌が持ち上がらない。それもそのはず、全自動麻雀卓は牌の中に鉄板が入っていてそれを卓が磁石で持ち上げて積んでいく仕組みだが、プロリーグは対局前に牌チェックという作業を行い少しでも亀裂や落ちない汚れ、欠けてる角などを発見したら即交換するので牌の中にある鉄板の帯びた磁力がマチマチ。持ち上げようとしてもカチッと揃いにくいのだ。「これは、ミサトじゃムリかもね。私達でやるからミサトはその辺でメグミさんと待ってて」「わかった」 カオリは手先が器用なので扱いにくいリーグ戦の牌もチャチャッとキレイにして2卓分清掃した。「はやーい」とマナミも驚く。「じゃあ行きましょうか」と成田メグミが先導する。新人3人にゴハンを奢ってくれるらしい。 3人は初めてのリーグ戦を終えて自分はついにプロ雀士になったんだ。という実感をしていた。それは、カオリにはひとつの夢だった。(夢って叶うんだなあ)そう思っていたらさっき牌掃除をした時から現れていたwomanが《何を言ってるんですか》と思考に入り込んできた。《まだこれからですよ。でも、今日の対局。いい麻雀してましたね。私は嬉しいです。カオリはどんどん強くなる》(コーチがいいからね)《そうですよ、神様を味方につけた姉妹なんてきっとあなた達だけですよ。伝説の姉妹になりなさい。きっとその願いは叶いますから》「カオリちゃんさっきから無言だけどどうしたの?」「へっ? あ、ああ。なんでしたっけ」「だからー、和食と洋食どっちにするかの話でしょ」

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その6 第七話 試される時

    68.第七話 試される時 財前姉妹が暫定1位2位という衝撃的なデビューを飾っている時、井川ミサトだけが絶不調だった。なんと、ミサトはラスラスラスと3連ラスを引いて身も心も打ちのめされていたのだ。 しかし、そんな時だからこそプレイヤーの真価が問われる。この今日の最終戦でどんな麻雀が打てるか。 3回ラスになろうとリーグ戦は始まったばかり、5節あるうちの1節目なので20回戦のうちのほんの3回に過ぎない。ここは気持ちを切り替えて行くのが正解だが、初めてのリーグ戦でラスしか取れない状態から復活できるか。不調を抜け出せるか。マイナスイメージを持たないで戦えるのか。まだ学生のミサトにそんな精神力があるのか。 いま、ミサトの器が試される。 ひとつだけ幸運だったことがあるとすればミサトの卓も5人打ちなので三回戦終了後に一旦抜け番だということ。この抜け番でどこまで気力を持ち直せるか。(くそぅ、大好きな麻雀が…… いま、こんなにつらい。分かってる。楽しいばかりじゃないって。いま、私は、試されている……!)(まさか、あのミサトが3ラス食らうなんてね)(ミサトならきっと持ち直すわよ) と、マナミとカオリは先に対局を終えて遠くから観戦していた。(がんばれ!)(がんばれミサト!) ミサトの卓の五回戦。まだミサトにチャンスは来ていなかった。苦戦が続くミサト。ミサト手牌 切り番一一四六八⑤⑧⑨455白白中  ドラ⑤ ミサトはここから⑧を切った。ピンズはドラを活用した面子をひとつ持てばいい。それより役牌の重なりで打点を作る手順だ。すると中が重なる。打⑨(中切らなくて良かったわね)(これでもだいぶ

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その6 第六話 メンタルコントロール

    67.第六話 メンタルコントロール「ロン」二三四②②②③④22344 3ロン「8000」 カオリのリーグ戦はダマ満貫を放銃する所から始まった。(あちゃー。でもこんなの分かんないし。始まりのマンガン失点くらいはなんて事ないわ。こういう持ち点で始まるゲームだと思えば) カオリはマイナスになってもそれが最初の設定点数だと思い込むことで気持ちを落ち着かせるという術を持っていた。 つまり、今回の場合はスタートから17000点持ちのゲームだと思い込むということ。そこからどうやってトップをとるか。元からそういうルールの遊びだと思えば今の放銃もなんら痛くない。 もちろんそれにより勝利条件が軽くなるなんてことはないのだが、気持ちに焦りがなくなれば自滅する可能性も減るというものだ。 勝負事でよくある敗因の最たるものは『自滅』であり、それを抑える効果があるとすればこのメンタルコントロールを狙った思考法は重要な考え方のひとつであると言えるだろう。 このような、気持ちを軽くする方法は全て佐藤スグルに教えてもらった。現役選手はやはり戦術本では学べない一味違うことを教えてくれる。 その後、カオリは見事に冷静な仕掛けや落ち着き払った降りを見せる。ラス目とは思えないほどのクールさで正確無比な麻雀をした。 落ち着いた状態で迎えた南場の親番。トップ目にドラポンを仕掛けられるも、ここだけはグイグイ押してアガリに行く。そして――「ツモ」カオリ手牌①①①②②⑥⑥⑥南南(東東東) 南ツモ「8000オール」 役役ホンイツトイトイ三暗刻炸裂! 終始落ち着いて打てたカオリはまるで当然

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その6 第伍話 本気だけを出す場所

    66.第伍話 本気だけを出す場所 マナミはよく知った顔と同卓だった。マナミ達のアルバイトしている雀荘『ひよこ』で平日の昼間だけ働いている成田メグミプロが同卓だったのである。「マナミちゃん。シャキッとした服装も似合うわねえ」「ありがとうございます。今日はよろしくお願いします」「お手柔らかにねえ。まあ、私は本気出すけど」「私も本気でやるしか能がないので。本気でやらせてもらいます」 すると成田メグミはハハハ! と笑った。屈託ない笑顔に眼光だけ鋭く光らせて。「いいわよ。お手柔らかになんて、そんなことするわけないし。プロリーグは本気だけを出す場所だものね」と言う。なんてことない会話ではあったが、この時の成田の雰囲気にマナミはゾッとした。(本気だ) いつもニコニコしてお客さんに『メグちゃん』と愛称で呼ばれて愛されている成田の勝負師の顔を初めて見た。(今更だけど、やっぱりメグミさんはプロなんだ。こんな顔を見せるなんて) 気圧されそうになる心を奮い立たせてマナミは勝利宣言をかますことにした。やる事が大胆なのはマナミの良さである。(ヨシッ!)「私はデビュー戦を必ず勝利で飾ります。今日の私と当たったのは不運でしたね」「ふっ、生意気ね。プロの厳しさを知ることになる最悪なデビュー戦にしてあげるわよ」「勝負!」──────「まいった」  負けたのは成田の方だった。「マナミちゃん。いや、財前真実プロ。あなたはこんな階級にいる女じゃないようね。さっさと昇級して上位リーガーになりなさい」「メグミさんも強かったです。何度も危ない場面があった。今日の私はちょっと勘が良かった。それだけです」「それが、重要なんじゃない。あーあ、私

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その6 第四話 潰し合うつもりで

    65.第四話 潰し合うつもりで「いーい? 私たち今日は当たらないけど、今後もし当たったらリーチ後の見逃しは絶対にしないこと。どんなに戦略性があってもよ。どうしても見逃したい局面は役を作ってダマにするの。分かった?」「わかりました~」「ミサトはマジメねえ」 ミサトの提案で麻雀部の3人は見逃しをかけない。助け合わない。お互いを潰し合うつもりでやる。そんなルールを設けることになった。 かつて、師弟関係にある雀士が師匠から出た当たり牌を見逃して麻雀界から熱気が急激になくなった八百長だと言われる事件があった。それが戦略性があろうと無かろうと、そこは問題ではないのだ。胡散臭いと思われた時点で終わりなのである。 この時のミサトの提案があったから、のちにどんなに3人が仲良くしていてもこの3人は友達同士でズルをしたりは絶対してないという信頼を得ることが出来るようになる。 他人からどう見えるか、どんな疑いがかかるか、それらを予測するのも読みの一部であると言える。その程度も分からずに師匠からの当たり牌を見逃しなどしてると大騒ぎになるという例も歴史が証明している。麻雀ファンを失望させない打ち手であること。それもプロ雀士の条件だとミサトは思っているので、外見は美しく、言葉はきれいに、姿勢は正しく、麻雀はテンポよく正確に、もちろん、ズルなんか絶対しない! を心掛けて新世代のニューヒーローとなることを目指していた。そこには、好敵手の財前カオリや財前マナミのほか女流リーグ覇者の白山シオリという強烈な敵もいたがミサトは総合的に見て自分だって負けてないと思っていた。あとは麻雀で勝つだけ。と。 対局開始まであと3分。ミサトは水を飲んで気持ちを落ち着かせた。緊張してるのを感じていたのでトイレで鏡を見て(強張るな。リラックス、リラックス)と暗示した。パンッ!! リラックスの暗示を自分にかけるかのようにミサトは手を叩いた。(私は大丈夫。私は強い)

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その6 第三話 プロリーグ前日

    64.第三話 プロリーグ前日《カオリ、どうしましょう》(なにが?) 赤伍萬の付喪神【woman】は財前カオリに憑いて今ネット麻雀をやっていた。親番中でドラは北woman手牌 切り番二三赤伍六七八九⑦⑧⑨23北北《私、自分を捨てることになりそうです》(何で? 八九を落とせばいいじゃん!)《それだとチャンタやイッツーがなくなって鳴きが出来ないから…… 無しです》(なら23落とせば?)《ダメです。それだと四しか安心してチー出来ないので、受けもあまり良くないですし》(じゃあどうすんの?)《この手の正着打は六萬切りでしょうね》(六萬か……)《これが唯一のムダなし手順です。チャンタ狙いなので一と1どちらからでも鳴いてテンパイに不安はない受けが残りますし安め引きでもリーチで親満は確定します。それに……》(分かった、六ね) 切り番にのんびり考える人はいない、womanの話をろくに聞きもせず打六とするカオリ。《あっ、あっ、私が。私が出ていっちゃいますうう》(うるさいなあ、六切りってwomanが言ったんじゃない。違うの?)《違わないです。他の手順には必ず浮き牌が出ますが六切りだけは浮き牌ゼロの構えです。ここを切る時だけ全体で打ててます。他の手順に存在しない強味。それは次切る牌が決定していない手順であるということ。これこそが最も強い攻めの一打であると言えます》次巡ツモ四(赤伍切らずに済んだ! ある種の理想的テンパイね!)《良かった~》『リーチ』数巡後……

Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status